背に吹き抜けるは君の風


あたしは仕返しに紗江の半紙に墨を飛ばそうと筆を持ち構えた。

その瞬間、

「なーにやってんだ?綾代ー」

影で薄暗くなるあたしの半紙。

「いやいやいや……。高科さんの半紙にも字書いてあげようかなーっと思って……」

「ほーぅ。それはそれは親切なことだなあ。さすが部長……」

「きょ、恐縮っす……」

こめかみに硬いものがあたったと思ったらそれを思い切りぐりぐりやられた。

「ぎゃー痛いです!すいません、許してください。本当にもうしませんんー」

「お前は部長のくせに頼りがいなさすぎだ!もっと気張れ!『集中』って字を百回書け」

先生の拳骨を喰らいながらあたしはひたすら謝った。

先生が指につけてるごつごつした指輪があたってすごく痛い。

(なんでいつもあたしばかり怒られなければいけないんだ!)

「綾代、お前、学年末テストやばかっ……」

「あ」

あたしはそんな先生の声をさえぎって思わず大声をあげた。

部室の前の廊下を愛の彼氏が通ったからだ。

愛の彼氏は一瞬ビクッとしてからこちらに振り向いた。

「美南……。なにやってんの?」

(た、確かに……。そういやなんだこの状況……。拳骨されてる生徒って……)