「はっ……はっ……」 宵闇が迫るこの時刻。 一人の少女が泣きながら町を駆けていた。 彼女の名前は閑田羽兎(かんだ わと)。 大学一年生だ。 三雲探偵事務所というところで助手をしていた。 しかし今はもう助手でも何でもない。 走る度に頭の上にちょこんと結んだ髪の毛が揺れる。 彼女の気持ちとは裏腹に、下で結んでいるみつあみは元気そうに跳ねた。 「――紘哉さんのバカ!」 確かに私が悪い。 でもそこまで怒る必要は無かったんじゃない? 羽兎はとにかく走り続けた。