お袋の作る食事は少し薄味だけど美味くて、好きだった。 なのに今では、ただ空腹を補うだけのもの。 今日の焼き魚は、少し塩辛いな。 トレーの上の料理をかきこんで、空になった食器を重ねて廊下に出す。 『いただきます』も『ごちそうさま』も、ずいぶん長いこと口にしていない。 カーテンを少しだけめくり、外を眺める。 秋口とは言え、昼間の日差しはまだまだ力強い。 太陽が、俺だけを避けて世界を照らしている。