[陽菜サイド]

 「ん…?」

 うっすらと、瞳を開くと、銀髪の男の人の顔が、すぐそこにありました。

 「うわぁっ!」

 「あ、起きたか?」

 「はい、でもあたし何で…」

 「こんなところに?」と聞こうとした、あたしの口を銀髪さんは大きな手で覆って。

 「説明はあとでする。そんなことよりもうすぐ姉さんが来るはずだから、お前は寝ているふりでもしてろ。」

 「へ?」

 「ほら、もう足音がしてる。」

 その、銀髪さんの言葉に耳を澄ますと、ドスドス…という足音がして、急いで、目をつぶる。

 ーバンッ

 「グレヴィールっ!アンタの部屋にアンタの異世界のフィアンセちゃんがいるって本当!?」

 「あぁ」

 「あ、この子なの?もしかして」

 「あぁ」

 二人の視線をバシバシ感じながら、「あたしは異世界のフィアンセちゃんじゃないですよー」と頭の中で、必死に叫ぶ。