次の日“これ弾けるの?”と彼は聞いてきた。
彼が指差す方を見ると真っ黒なピアノだった。
“弾けるよ”と私は立ち上がってピアノの蓋を開けた。
“こんなに近くで本物のピアノを見たのは初めてだよ”と彼は白と黒の鍵盤に目を輝かせた。
私はビックリした。
“家にピアノ無いの?”と聞くと彼は“無いよ”と答えた。
物心がついた時からここにはピアノがあった。
だから私はどの家にもピアノはあるものだと思っていた。
彼は“全ての家にピアノがあるわけじゃないよ”と教えてくれた。
私は初めて知った外の世界を想像する事が出来なくて、少し悩んだ。
そんな私に彼は“何か弾いて”と言った。
私は簡単な曲を弾いた。
彼は“上手だね”と褒めてくれた。
私は初めて褒められてなんだか恥ずかしくなった。
“もっと弾いて”と彼は私が座っているピアノのイスの隅に座った。
私は少し得意げになってもう一曲弾いた。
“キレイな曲だね、なんて言うの?”と彼は聞いてきた。
“今、適当に弾いてるだけだから名前は無いよ”と私は答えた。
すると彼は今まで見た事のない顔をして“君は凄いね、曲を作れるんだね”と興奮していた。
私はまた恥ずかしくなった。
自分の曲を誰かに聴いてもらうのは初めてだった。
“君はもっとたくさん曲を作って、たくさんの人に聴いてもらうべきだよ”と彼は言った。
私の曲を聴いてもらう?
そんな事は一度も考えた事がなかった。
でもすぐに気付いた。
私はここから出る事が出来ない。
それに彼以外の人をここに入れるつもりはない。
私は明るい表情をした彼に“それは無理だよ”と伝えた。
でも彼は表情を変えなかった。
彼が指差す方を見ると真っ黒なピアノだった。
“弾けるよ”と私は立ち上がってピアノの蓋を開けた。
“こんなに近くで本物のピアノを見たのは初めてだよ”と彼は白と黒の鍵盤に目を輝かせた。
私はビックリした。
“家にピアノ無いの?”と聞くと彼は“無いよ”と答えた。
物心がついた時からここにはピアノがあった。
だから私はどの家にもピアノはあるものだと思っていた。
彼は“全ての家にピアノがあるわけじゃないよ”と教えてくれた。
私は初めて知った外の世界を想像する事が出来なくて、少し悩んだ。
そんな私に彼は“何か弾いて”と言った。
私は簡単な曲を弾いた。
彼は“上手だね”と褒めてくれた。
私は初めて褒められてなんだか恥ずかしくなった。
“もっと弾いて”と彼は私が座っているピアノのイスの隅に座った。
私は少し得意げになってもう一曲弾いた。
“キレイな曲だね、なんて言うの?”と彼は聞いてきた。
“今、適当に弾いてるだけだから名前は無いよ”と私は答えた。
すると彼は今まで見た事のない顔をして“君は凄いね、曲を作れるんだね”と興奮していた。
私はまた恥ずかしくなった。
自分の曲を誰かに聴いてもらうのは初めてだった。
“君はもっとたくさん曲を作って、たくさんの人に聴いてもらうべきだよ”と彼は言った。
私の曲を聴いてもらう?
そんな事は一度も考えた事がなかった。
でもすぐに気付いた。
私はここから出る事が出来ない。
それに彼以外の人をここに入れるつもりはない。
私は明るい表情をした彼に“それは無理だよ”と伝えた。
でも彼は表情を変えなかった。

