廊下の突き当たりのドアの前に立つ。

そこはお母さんとお父さんの部屋だ。

この部屋には毎日出入りしているのに、今日は何だか全くの違う部屋みたい。

ドアノブに触れるといつもよりも何だか重たいように思う。



ゆっくりとドアを開け、部屋に入る。

一目散に鏡の前に立ち、お母さんがいつも使っている『あれ』を探す。


「お母さん、どこに置いているのかな」


いつも使っているところは見ているけど、どこに片付けているかまでは見ていなかったことに気づき、もっとちゃんと見ていれば良かったと悲しくなった。

あまり散らかしてしまうと、お母さんはすぐに私の仕業だと分かってしまうから気を付けないと。

幼い心の中にはも、そういうことはちゃんと分かっている。


「あった」


ようやく探していたものが見つかった。



私にとっては宝箱のようなもの・・・

それはお母さんの化粧箱。

その宝箱が私の目の前にある。



もう一度回りをきょろきょろと見渡し、誰もいないことを確認する。


(本当に誰もいないよね)


さっきと違って、今度は私の腕の中には宝箱がしっかりとあった。