「セイ、反応遅いよ」
 
蒼馬から指摘される。

「うるさい……」
 
考え事をしていたから反応が遅れただけだ……と心の中で言い訳する。

「……聖くん?」

「ああ、ごめん、何?」

「傷、大丈夫ですか? 痛くないですか?」

「傷? 別に痛いところはないけど……」
 
言われて見れば、左腕全体に包帯が巻かれていた。しかし特に痛みは感じない。

「でも凄く血が出てたのに……」
 
李苑が心配そうに言うと、蒼馬も寄ってきた。

「そうだそ。血ぃ止まんなくて三回も包帯変えたんだから。痛くないはずないだろ」
 
そう言いながら、蒼馬は聖の腕に巻いてある包帯をはずす。白い包帯には、茶色に変色した血の痕がついていた。

「ほらっ、て……あ、あれ?」

「……え?」
 
蒼馬と李苑が驚きの声を上げる。

「?」
 
聖も腕に目をやる。蓮や真吏もこちらに顔を向ける。

「な……なんで? なんでっ……?」
 
蒼馬は何を言って良いのか分からず、聖の顔と腕を交互に見比べる。李苑もオロオロするばかりで、黙ってしまった。

「どうしたんだ? ……傷、そんなに深くないけど」
 
確かに包帯には血の痕がべったりとついていたが、傷自体はほんの掠り傷に見えた。しかし蒼馬と李苑の様子が普通ではない。駆け寄ってきた蓮と真吏も呆気に取られている。