「あ、気が付いたか?」
 
目を開け、体を起こすと、向かいのソファから蒼馬が声をかけてきた。
 
一瞬なんのことか分からなかったが、体に残る疲労感が先刻の出来事を鮮明に思い出させた。

「……ああ」
 
返事を返すと、蒼馬は安堵の表情を浮かべた。その隣にいた連も、立ち上がり笑顔を見せる。
 
聖は疲労の残る重い手で髪をかきあげながら周りを見渡した。
 
自分が寝かされていたソファの向かいに蒼馬と蓮。少し離れたところに真吏が壁に背を預け、腕組みをして立っていた。

紅葉と李苑の姿が見えないが、キッチンから食器を運ぶカチャカチャという音が聞こえてきたので、そっちにいるのだろう。

カーテンの外は薄暗く、夕方なのかと思ったが、時計が4時40分を指していたので朝だと分かった。


「皆、寝てないのか?」

「お前が倒れてんのに寝てられっか」

「そっか……ごめん。皆、怪我は?」

「してねえよ。平気」

「良かった」

「うん。でもな」
 
蒼馬は床に目を落とす。

「かなり精神的にガーンってきたかも」

「……」

良く見れば、蒼馬だけでなく、蓮、真吏の表情もどこか暗い影を落としている。