「別に、それならそれでいいけどね……」
自分だけのものなら、特に執着するものなどない。けれど自分ではないものが。聖を取り巻く人々のことを想うと、死ぬことは出来ない。
(母さんが幸せになるまでは)
その想いだけだった。聖を生にしがみつかせるものは。
「どうすればいい?」
声の主に訊ねる。
『俺の名を呼べ。そして力を解放しろ』
「ああ……あんたは〝俺”、なんだ」
名前が分かる。それは自分の中にあるもの。
「ティージェ! 俺に力を!」
そう叫んだ瞬間、身体の中から湧き上がるように力が溢れてくるのが分かった。燃えるように熱いものが全身から噴き出してくる。
「……あっ!」
目の前の景色が消え、徐々に赤く染まった部屋が見えてきた。そして、聖は自分が床に倒れていたことに気付く。
顔を上げると、皆同じように床に倒れていた。
「蒼馬? おいっ」
一番近くにいる蒼馬に声をかける。しかし返事はない。
(これは……)
知っている者の〝気”だ。紅い幻惑を操る者は、良く知っている。
「ファリア!」
摩利支天ファリアの生まれ変わりがすぐ近くにいる。聖はその〝気”を辿り、家の外へ出た。
自分だけのものなら、特に執着するものなどない。けれど自分ではないものが。聖を取り巻く人々のことを想うと、死ぬことは出来ない。
(母さんが幸せになるまでは)
その想いだけだった。聖を生にしがみつかせるものは。
「どうすればいい?」
声の主に訊ねる。
『俺の名を呼べ。そして力を解放しろ』
「ああ……あんたは〝俺”、なんだ」
名前が分かる。それは自分の中にあるもの。
「ティージェ! 俺に力を!」
そう叫んだ瞬間、身体の中から湧き上がるように力が溢れてくるのが分かった。燃えるように熱いものが全身から噴き出してくる。
「……あっ!」
目の前の景色が消え、徐々に赤く染まった部屋が見えてきた。そして、聖は自分が床に倒れていたことに気付く。
顔を上げると、皆同じように床に倒れていた。
「蒼馬? おいっ」
一番近くにいる蒼馬に声をかける。しかし返事はない。
(これは……)
知っている者の〝気”だ。紅い幻惑を操る者は、良く知っている。
「ファリア!」
摩利支天ファリアの生まれ変わりがすぐ近くにいる。聖はその〝気”を辿り、家の外へ出た。


