FORTUNE～ﾌｫｰﾁｭﾝｼﾘｰｽﾞPAGE1

「そうよ」
　
聖の考えを見透かすように、ラクシュミーは言った。

「私が先に死んでしまったの。ほら、こんな風に……」
　
景色が〝あの時”のようになる。空を覆う、何もかもを呑み込んでしまいそうな暗雲、肌を撫でる炎に焼けた風、傷だらけで倒れる仲間達。
　
ふわり、と風が舞った。ヴァジュラの顔が不気味に歪む。

「……やめろ」
　
小さく呟く。
　
聖自身、何故そう言ったのか分からない。

「やめろっ」
　
少し離れたところにラクシュミーがいる。そして、ヴァジュラから全身全霊をこめた〝気”が撃ち放たれる。

（駄目だ、この先は──）
　
見たくないものがある。それは分かっている。──ラクシュミーの〝死”が、そこにある。


「やめろっ……これ以上思い出させるな──!!」
　
そう叫んだ瞬間、頭の中に声が響いた。

『開放しろ』
　
その声にハッと我に返る。目の前の景色はそのまま一時停止したような状態になっている。

『力を解放しろ……聖』

「……誰、だ？」
　
何だかとても懐かしい。けれども同時に、ずっと傍に在ったような気がする声だ。

『もう目覚めなくてはならない、お前は』

「何に」

『自分の〝力”に。そして、思い出さなくてはならない。お前の〝運命”を』

「運命……？」
　
その言葉に、聖は笑いたくなった。

（ラクシュの言っていた、みんな死んでしまうことが俺たちの運命？）
　
死ぬために生まれてきて、そして死ぬために出逢ったのか、ここにいる皆は。そんな馬鹿げた話があるのだろうか。