何故かそこだけ夢に出てこない。いや、見ているのかもしれないが、覚えていないのだ。

「まあいいわ。別にその記憶が分からなくちゃ困るわけでもないし。それにしても、書き出してはみたものの、何だか良く分からないわね」

紅葉は皆が持ち寄った夢の記憶のレポートを眺め、軽く溜息をつく。

「確かになあ。でもよ、これなんか面白くねえ?」
 
蒼馬はトントン、とレポート用紙を指で叩く。

「ティージェが寝坊して迷惑かけられたっての、一番多いじゃねーか。さっすがセイの前世って感じ? 笑っちまうよな」
 
言いながら笑い転げる蒼馬に、聖は何も言葉を返せなかった。今現在、寝坊をして蒼馬にいつも迷惑をかけているのは本当のことだったから。

前世でも同じことをしていたのだから、笑われても仕方ない。

「まあ、蒼馬も人のことは言えんがな」
 
真吏は少し意地悪げな笑みを浮かべる。

「ラディウスは幼い頃、勉強が出来なくて良く居残りをさせられていたであろう。それに付き合わされていたティージェは哀れなものだったぞ」

「そういえばそんなこともあったわよね。遊びに行くといつも居残りさせられてたわ。代わりにティージェを誘おうと思っても、ラディウスがティージェを離してくれなかったのよね」

「そうだっけー?」
 
蒼馬はとぼけた顔をする。