(う……うああああっっ)
 
ハンカチを握り締めて真っ赤になる。
 
泣いていた聖に、そっとハンカチを差し出してくれた李苑。その彼女に……抱きついたような気がする。
 
頭が混乱していたため今まで忘れていたが。よく思い返してみると、そうだった。
 

李苑がハンカチを貸してくれた。
 
傷を負った精神が、安定を求めた。
 
そして、抱きついた。
 

いや、正確には寄りかかった、が正しい。だが聖には寄りかかるも抱きつくも同じことだった。

彼女は少し驚いたものの、嫌な顔ひとつせずに「大丈夫ですよ」と微笑んでくれた。けれど。

(何やってんだ俺は!! あああ、やっぱり恥ずかしいっ、人生最大の恥だっっ!)
 
もはやクッションを叩くだけでは収まらず、ベッドからタオルケットを引きずり落とすと、それにくるまって突っ伏した。




「どうしたんだろ、聖。ご飯いらないなんて」
 
リビングでは蓮が心配そうに二階を見上げていた。

「大丈夫なんじゃないかしら。ふふふ」
 
紅葉は穏やかにそう言う。
 
昨日まで見えていたおかっぱの少女の姿が急に見えなくなった。それは少女の身に何かあったような悪い感じではなかったので、李苑が何か働きかけてくれたのだろうと思ったのだ。