「ラクシュ、どうしたんだ?」

「あっ、そうそう」
 
ラクシュミーは走ってきた為に弾んだ息を整えると、また笑顔を見せた。

「今日の武術大会の審判役、がんばってくださいね」

「うん、ありがとう」

「じゃあ、私も準備がありますから」

「……それだけ言いに来たのか?」

「ええ。聖誕祭が始まってしまうと忙しくてなかなか逢えないでしょう? だからその前に逢いたくて……」
 
少しだけ頬を赤く染め、ラクシュミーは言った。

「それじゃ、また後で」

「あ、ラクシュ!」
 
走り出そうとするラクシュミーを呼び止める。

「ラクシュもがんばって。歌謡祭は見に行くから」
 
ラクシュミーは同じく聖誕祭の余興である歌謡祭に、歌姫として出演する予定であった。
 
ティージェの言葉を聞いたラクシュミーはパッと顔を輝かせ、うれしそうに頷いてまた走っていった。

「いいですね、毘沙門天様は」

「本当ですよ。天界一の美女から『頑張って』だなんて……うらやましすぎます」
 
神将たちの言葉に、ティージェは軽く笑う。確かに、優越感は多少ある。こんな幸せ者はいないだろうと感じている。
 
この幸せがこれからも続いていく。ずっと……。