そんなティージェに気付かず、神将2人は顔を紅潮させて語りかけてきた。

「それより、もうすぐですね、吉祥天<きっしょうてん>様とのご婚礼は!」

「本当ですね、こんなにおめでたいことが続くなんて、俺たちはもううれしくてうれしくて」

「なんてったって毘沙門天様と吉祥天様は天界中の憧れの的! お二人の晴れ姿を想像するだけで興奮して眠れません!」 
 
嬉々とした表情で話す神将たちに、ティージェは少々押され気味に、しかし笑顔で「ありがとう」と礼を述べた。


「では準備に取りかかるか」

「はい!」
 
大会の行われる会場に入ろうとすると、パタパタと軽やかに走る足音が聞こえてきた。

振り返ると、薄い桃色の衣に身を包んだ蜜色の長い髪の美女が、こちらに向かって走ってくるところだった。

「ティージェ!」
 
高く、澄んだ声が響き渡る。

「あれ、ラクシュ」
 
それはティージェの婚約者である吉祥天ラクシュミーであった。

「お、おはようございます、吉祥天様」
 
一緒にいた神将たちが硬くなりながら挨拶をする。

「おはようございます。良いお天気で良かったですわね」

「は、はい!」
 
朝露のように光り輝くラクシュミーの笑顔に、神将たちの顔は真っ赤に染まる。そんな2人に苦笑しながら、ティージェはラクシュミーに話しかけた。