朝のうちは良く晴れたいい天気だったのだが、午後から見る間に雲が広がってきて、あっという間に雨になった。
「あーっ、洗濯物がーっ!」
紅葉は慌てて外に飛び出す。
そして素早く物干し竿からタオルや洋服等を取り込み、聖に投げつけた。
「これそこに置いといて! 真吏、二階のベランダのシーツお願い!」
「分かった」
同居することになってから一時間と経たないうちにこき使われる真吏だったが、別段気にすることもなく、紅葉の指示通りに二階へ上がっていった。
そうして三人がバタバタしているところに蓮が帰ってきた。
「ただいまー、濡れちゃったよ」
髪の毛から雫を垂らしながらリビングに入ってくる蓮。
「お帰り」
その蓮に、洗濯物を抱えた聖が声をかける。すると、蓮の顔には見る間に笑顔が広がった。
「聖が普通に挨拶してくれたー」
本当にうれしそうにそう言う蓮。
確かに今までは、家族でもない人間に挨拶をするのが少し恥ずかしくて、どもったり、そっぽを向いていたりしたかもしれない。
それが新しい同居人が出来て、自分の中にあるものを他人と共有したことで、少し打ち解けたのかもしれない。
今までの蓮への態度を申し訳なく思った聖だが。
「うわー、なんかうれしいな。やっと聖も俺に慣れてきてくれたのかなあ?」
蓮は気にする様子もなく、ただ嬉しそうに笑う。
そんな彼を見て聖までもが嬉しくなった。人と触れ合うことはいいことなのかもしれない。そう思えた。


