少年は混乱する。一体何が起きているのだろう?

何故このような場所に自分はいるのだろう?


ふと、誰かに肩を掴まれた。

ハッとして振り向くと、額から、口から、肩から、腕から……全身から血を流した青年が、必死の形相で少年を見つめていた。

「悪い……失敗、した……」

青年はそう言うと、少年に寄りかかるようにしてズルズルと倒れこんだ。それきり、動かなくなる。

嫌な感じが胸いっぱいに広がる。この人は──死んだ?

「…ティージェ」

また後ろから声がした。今度は女の声だ。

「ごめんなさい、あたしも、もう駄目よ……」
 
青年のように血だらけのその女性は、ふらつきながら少年に歩み寄ってきた。

「皆……皆、逝ってしまったわ……私も、…この子も、もう駄目……。でも、あいつは……あいつだけは倒さなきゃ。何としても、あいつだけは!」
 
女性はそう言って、空に浮かぶ不気味な存在を激しく睨みつけた。

「…後は頼んだわ」
 
少年に微笑みかけると、女は空へと飛んだ。

「──アナリス!」
 
無意識のうちに叫ぶ。

「駄目だアナリス! お前までっ…!」

そう言う間にも、少年が「アナリス」と呼んだ女は黒髪の者に突っ込み、閃光に散ってしまった。