FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1

「俺、すぐ近くに住んでるんだ。毎日押しかけるから、遊んでくれよな」

「ああ……」
 
聖は蒼馬以外に馴れ馴れしくされたことがないので、人懐こく笑う蓮の言動には戸惑っていた。

「こら、蓮は受験勉強があるでしょう。今のままじゃどこにも行けないわよ」
 
母親のように紅葉が言うと、蓮はぷくーっと頬を膨らませた。

「ちぇーっ、分かってるよ。あっ、そうだ。聖くん、一緒に勉強しようよ。入院してる間の勉強とか教えるし」

「あ、ありがとう……」

「でも蓮が人に勉強を教えるなんて出来るのかしらねー」
 
紅葉が口を挟む。

「うっ……圭一郎おじさーん、紅葉が苛めるよ……」
 
蓮の情けない声に、圭一郎は「はははは」と笑った。

「いやあ、貴方たちいとこは本当に面白いですね。ウチの馬鹿息子にも見習わせたいくらいですよ」

「それって褒めてるんですか。貶してるんですか」

「貶してるんです」

「……」

「嘘ですよ。褒めてるんです」

「圭一郎さーん!」
 
詰め寄る紅葉と蓮に、圭一郎はにっこりと笑う。

「ではそろそろお暇しましょうか。何かあったらご連絡くださいね」

「ああ、はい。ありがとうございました」

「いえいえ」
 
圭一郎は飛高家の玄関を出たところで、思い出したように振り返った。

「天野くん、気兼ねなどしないでゆっくり静養してください。今日から貴方はこの家の一員なんですから」

「はい……」

「まあ、ひとつ気をつけることと言えば……」
 
圭一郎はすすす、と聖に寄ってきた。