どこまでも続く白い空間。真っ白な色の他には何も存在しない空間。
 
そこに唯一つ存在する運命の輪は、相変わらず音もなく、ゆっくりと廻っていた。
 
その下で。
 
フォーチュンは銀の髪を広げ、仰向けに倒れていた。
 
彼女は禁を犯した。
 
運命の輪を廻す者が人の運命に関わってはいけない。その掟を破ってしまった。そうして自らの命をかけて、闇の力を葬った者達の命を救った。
 
感情を持ってはいけない。
 
人の運命に関わってはいけない。
 
それを破ったのは、決して聖たちのためではなかった。

見守り続けることしか出来ない自分が嫌になったから。

彼らがこれ以上不幸になるのを見たくなかったから。

彼らが幸せになるなら、自分の命を投げ打っても構わなかった。
 
そして、“あの方”の元へ旅立ちたかった。
 
 
しかし──。

 
フォーチュンの瞳は、ゆっくりと開いた。

『何故……私に罰をお与えくださらなかったのですか』
 
もうここには居ない、“その人”に問いかける。

『私は禁を犯した……なのに』
 
十分な力がここには残っていた。
 
その姿は消え去っても、この空間に残る莫大な力。それで禁を犯した者へ制裁が与えられるはずだった。

 
ざあっと風が巻き起こる。
 
時間というものが存在しないこの空間に、風が起こるなどありえない。
 
この風の源を辿り、フォーチュンは震える心を必死に押さえ込んだ。