そこにメールを送ってきた蓮の名前が出てこないのは、人徳の差である。


「聖くん。少し遠距離になっちゃいますけど……これからも宜しくお願いしますね」
 
にっこりと微笑む李苑に、聖も微笑み返す。

「ああ……」
 
そう返事をして、少し屈んだ。
 
そして、頬に軽いキス。

 
いつかのキスの、お返しだった。
 
李苑は目を丸くした後、顔を真っ赤にした。

「聖くん、ずるい……」
 
非難めいた声を上げる李苑に、聖は吹き出した。

(こんなに心臓バクバクさせてくれて、ずるいのはどっちだよ)
 
なんて思いながら。
 
李苑をそっと、抱きしめた。

 
あの時、失ってしまったと思ったものが、今こうして腕の中にいる。温もりを全身で伝えてくれる。その喜びを体で、心で感じた。


 
運命は変えられる。
 
未来は変えられる。
 
それは、自分の手で創っていくものだから……。