そして、徐に顔を上げると、聖を見つめてはにかんだ。

「私も、聖くんが好きです……」
 
今度は聖が驚く番だった。「俺?」と言うような目で小首を傾げると、李苑も小さく頷いた。
 
ほんの僅かな間見つめあった後、2人は照れくさくて同時に笑い出した。

「あは……でも、あんまり李苑に逢えなくなるな……」

「そうですね。やっぱり、東京となると少し遠いです」
 
ガッカリしたようにそう言う李苑に、聖はハッとする。

「……東京?」

「はい。東京です」

「イギリスは?」

「父のところに一旦帰って、本社移転のためのお手伝いをしようと思いまして……。今度本社を東京に移すんだそうです。本当は、ここをあまり離れたくなかったんですけど、今まで私の我侭で母の故郷にいさせてもらいましたから、今度からは父の傍にいようと……」
 
李苑の話は色々と突っ込んで聞きたい部分がたくさんあったのだが、聖の頭の中は蒼馬達に対する怒りに溢れていて、それどころではなかった。
 
聖は、騙されたのだ。
 
イギリスに帰る話は本当だ。
 
しかし、それは一時的なことで、本当は東京に引っ越すらしい。恐らく、高校を受験していないという話も嘘で……。

(蒼馬……今度会ったらぶっ飛ばす!!)
 
李苑には見えないように、背中で拳骨を作った。