FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1

「あ……ありがとう。でも、紅葉のところに来たんじゃない。李苑に……逢いに」

「え? 私に?」
 
李苑がキョトン、とする。
 
どう切り出そうか、何を話そうか迷っていると、玄関先からリビングの一角が見えた。
 
以前あった観葉植物たちの姿がない。
 
ソファやテーブルもない。
 
もう引越しの準備は終わってしまったのだろうか。そして、もうすぐいなくなってしまうのだろうか……。

「イギリス……行くんだって?」

「はい、明日の朝には発ちます」
 
さらりと李苑は答える。

(そんなにすぐ?)
 
聖は愕然とした。
 
明日になったらもう逢えない……そう思うと、心臓がチクチク痛んだ。

走り通しだったからではなく、この少女に逢えなくなることが嫌だと心が叫んでいる。それを痛いほどに感じた。

「俺、李苑に逢えなくなるのが嫌だと思って……」
 
頭で考えても解らない。
 
心で感じたまま、言葉にしてみた。

「あの……でも、すぐに帰って来れますから……」

「すぐに帰れる距離じゃないだろう?」

「……はい」

「そんなの……嫌だ。離れたくない……」
 
切なそうに李苑を見つめ、心のままに、言う。

「李苑が、好きだ」
 
その言葉に、李苑はゆっくりと瞬きをした。

「……私が?」
 
戸惑い気味に聞き返す。聖は小さく頷いた。
 
李苑は目を伏せ、僅かに頬を紅く染めた。

「あ、ありがとうございます…」