FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1

イギリスなんて、そう行ける距離ではない。もしかしたら、このまま一生逢えないなんてこともありえる。

あの笑顔を、もう見ることは出来ないのだろうか?


「……蒼馬」

「あいよ?」

「ちょっと俺、行ってくる」

「へ?」
 
蒼馬の返事を待たず、聖は走り出した。
 
その後姿を眺め、蒼馬はニヤッと笑った。

「やあ~っと気付いたのか。ま、頑張って来いよ~」
 
軽く手を振って、親友の恋の行方を応援した。





一旦家に帰り、静に合否の結果を報告してから、財布を持って慌しく出て行った。

 
電車に乗って1時間。
 
まだ家にいてくれることを祈りながら、降り立った駅からまた走った。

 
見慣れた湖の畔を、息を切らしながら走っていく。
 
飛高邸を通り過ぎ、湖の遊歩道をグルッと周ると、白い壁の小さな家が見えてきた。
 
家の前で一息つき、足早に玄関ホールに入った。
 
そして、扉の横にあるインターフォンを押す。


「はい?」
 
少し間をあけ、李苑の声がした。
 
ガチャリ、とドアが開いて、整った顔の美しい少女が顔を出した。

「聖くん? えっ……早いですね! もういらしたんですか?」

「え?」

「紅葉さんに報告に来られたんでしょう? その様子だと合格ですよね? おめでとうございます!」