「へっ?」
 
男子生徒2人と、周りの生徒達も、意外そうな顔で聖を見た。

「足し算、間違ってる」

「へっ?」
 
言われた男子生徒はノートに目を戻す。

「げえええ! こんなトコ!? しかも2たす5は6~!? 馬鹿じゃん俺!」

「お前馬鹿~!」
 
周りから失笑が漏れる。

笑われた男子生徒は、口を尖らせながらも、聖を見上げた。

「天野、サンキュー」

「ああ」
 
ふわっとした柔らかい笑みで軽く頷くと、聖はその場を立ち去った。それを、更にポカンとした顔で眺める生徒達。

「天野って……あんな風に笑う奴だったっけ?」

「いや、つーか、笑ったの初めて見た」

 
少しずつ、確実に。
 
聖の中でも何かが変わってきていた。




謎の崩壊を遂げた都心部は、着実に復興の道を歩んでいた。
 
謎の建物崩壊、削り取られた道路、グシャグシャに潰された街路樹。

異常気象か、それともガス爆発か、低周波の影響か……人々は色々な視点から原因を検証したが、まったく原因不明、というのが結論だった。
 
何故ならば、死者がまったく出なかったからである。
 
これだけ人の集まる大都市で、かなりの広範囲にわたり街が破壊されたにも関わらず、死傷者はゼロ。

負傷者も、数える程しか出なかった。──その負傷者も、聖たち7人と、陰陽家の術者達数十人というもので──専門家たちも匙を投げたい心境のようだ。