その二ヵ月後、聖は無事退院することになった。
本来ならば家族を呼んで引き取ってもらうところなのだが、聖はそれを嫌がった。
家出をしてきたのだからそれは当然なのだろうが、それではどうしたらいいだろう。
施設に預けるのも何だか可哀相だし、警察にも報せないでいる。
「犯罪にならないかしら……」
「大丈夫です。こっちで事故のことは処理しましたから」
紅葉の心配を、圭一郎はあっさりと打ち消した。彼女たちの家は警察関係者にも多くの知り合いがいた。そして事故そのものを揉み消す圧力をかけられる立場にある。
──権力って怖い。
紅葉はチラリとそんなことを思った。
「それより、どうしますか? 私が預かってもいいですが」
「ああ……いえ、あたしが引き取ります」
「いいんですか?」
「はい、そうさせてください」
何故かは分からないが、そうしなければならないと感じた。
この少年には何かがある。紅葉の直感が、彼を手放してはいけないと告げていた。
それに、あの日以来聖に憑いている少女の生霊のことも気がかりだ。
たまに身体に戻ってはいるようだが、ほとんど聖の傍から離れない。見えてしまうからには何とかしてやりたい。
色々思考を巡らす紅葉とは裏腹に、蓮は聖が飛高家に引き取られることを素直に喜んでいた。


