沙都美も、

「中学生でも新聞配達くらいなら出来るんじゃない?」
 
なんて、家計のことを心配してくれている。
 
それを聞いた聖は、隠れてバイトしていたことが絶対にバレませんように、と祈ったものだ……。

 
知らない間に、皆強くなっている。
 
少しずつ、成長しているのだと思った。


「……ま、その顔なら大丈夫か!」
 
揺ぎ無い力強い瞳をした聖に、担任はそう言って笑った。

「貴方なら、気を抜かなければ余裕で合格圏内だから。入試まで頑張りなさい!」

「はい。ありがとうございます」
 
聖は一礼すると、鞄を持って教室を出た。
 
 
廊下に出ると、二者面談の順番待ちをしている生徒たちが何人か、椅子に座っていた。

「あれ、違う……なんでえ!?」

「ここ間違ってんじゃ?」

「合ってるよ!」
 
教科書とノートを広げてそう囁き合っている男子生徒2人に目を向ける。今までだったらそ知らぬ顔で通り過ぎるところだが……何となく足が向いた。

「間違ってねーよ。なんで答え合わないんだ~!?」
 
地団駄を踏む男子生徒のノートをヒョイ、と覗き込む。──間違いはすぐに見つかった。

「ここ」
 
聖は間違い箇所を指で指した。