「ええと、天野聖くん、よね? あたしの声、聞こえてる?」
聖は目だけを動かし、紅葉の方を見た。
「……聞こえる」
僅かに動く唇から、少し擦れた声が出た。
「良かった。ごめんなさいね、あたしの乗っていた車がぶつかっちゃったの。覚えてる?」
聖は少し目を閉じて、今までのことを脳裏に思い浮かべてみた。
家を飛び出して。当てもなく歩いて。いつの間にか、山の中に迷い込んで……。
「わかる……気がする…」
「そう……。あ、どこか痛いところある?」
「……全身」
「……そうよね、ごめんなさい」
紅葉は自分の乗っていた車ではねてしまったことに責任を感じ、謝る。
聖は僅かに左右に頭を動かし、否定の意志を示した。それを見て紅葉は苦笑する。
「ああ、そうだわ。目が覚めたばかりでこんなこと聞くのもなんだけど、おかっぱ頭の可愛い子、知らない? たぶん小学……うーん、中学生かな? 一年生くらいの女の子。ちょっと君に似てる感じの」
「……」
聖はまだぼんやりとする頭で考えた。
答えられるはずだった。その容姿からはすぐに妹の姿が思い浮かぶはずであったから。しかし、聖はこう答えたのだ。
「……知らない」
聖は目だけを動かし、紅葉の方を見た。
「……聞こえる」
僅かに動く唇から、少し擦れた声が出た。
「良かった。ごめんなさいね、あたしの乗っていた車がぶつかっちゃったの。覚えてる?」
聖は少し目を閉じて、今までのことを脳裏に思い浮かべてみた。
家を飛び出して。当てもなく歩いて。いつの間にか、山の中に迷い込んで……。
「わかる……気がする…」
「そう……。あ、どこか痛いところある?」
「……全身」
「……そうよね、ごめんなさい」
紅葉は自分の乗っていた車ではねてしまったことに責任を感じ、謝る。
聖は僅かに左右に頭を動かし、否定の意志を示した。それを見て紅葉は苦笑する。
「ああ、そうだわ。目が覚めたばかりでこんなこと聞くのもなんだけど、おかっぱ頭の可愛い子、知らない? たぶん小学……うーん、中学生かな? 一年生くらいの女の子。ちょっと君に似てる感じの」
「……」
聖はまだぼんやりとする頭で考えた。
答えられるはずだった。その容姿からはすぐに妹の姿が思い浮かぶはずであったから。しかし、聖はこう答えたのだ。
「……知らない」


