FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1

激しく嗚咽し、言葉に詰まった静は、しばらく聖の胸で泣いていた。その後、ゆっくりと顔を上げ。

「良く……顔を見せて?」
 
聖の顔を両手でそっと挟み込み、静は泣きながら微笑んだ。
 
小さく何度も頷きながら、しっかりと聖を見つめ──そして、優しく抱きしめた。

「お帰りなさい……もう、どこにも行かないでね……」
 
優しく撫でられる髪。
 
温かい腕に包まれて、聖はまた何がなんだか解らなくなる。

(これは、夢?)
 
この温かさは。
 
激しく、そして優しくぶつけられる愛情は。
 
本当に、夢──?

それから医師と看護師がやってきて、問診や触診、検査をされ、バタバタしているうちに少し落ち着いてきた。

 
まずは混乱する頭の中を整理しようと、聖は沙都美に目を向けた。

「沙都美……怪我は……?」

「もう治っちゃったよ。お兄ちゃんが家出して3ヶ月も経つんだからね!」
 
目に涙を溜めながらも、いつもの憎まれ口を叩く口調で答える沙都美。

「ふふ、でも目が覚めてまだ一週間しか経ってないのよ。歩くのもやっとなんだから」
 
涙を手で拭いながら、静は笑う。
 
そして、ジッと聖を見た。

「不思議ね……。貴方が無事なことは、和泉さんという方から聞いて知っていたわ」

「え……」
 
和泉というと、圭一郎のことだろうか。彼は密かに母と連絡を取ってくれていたらしい。