FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1

 
ゆらり、ゆらり。
 
白い空間に漂う意識は、温かい、水の中を漂っているかのように心地良い空間を彷徨っていた。
 
眠りを妨げないよう、静かに、ゆっくりと流されている。

 
それが、急に何かに引っ張られた。

『……ちゃん……』
 
ずっと遠くで、懐かしい声がした。聖はその声を拾おうと、意識を集中させる。

『おに……ちゃん……』
 
この、声は……。

(ああ、沙都美。お前か……)



「お兄ちゃん!」
 
ハッと目を覚ます。
 
僅かに霞む目に映る、最愛の妹の姿。

「お、にい、ちゃ……」
 
聖を覗き込む沙都美の顔が、見る間に歪んでいく。

「うわあああ、お兄ちゃん! お兄ちゃん──!」
 
泣き喚きながら、聖に縋り付く沙都美に──聖は、ただ呆然とした。
 
何が。
 
一体何が起きているのだろう。

「よ、良かった、目が覚めて……私、お母さん呼んでくるからっ」
 
ゴシゴシと目を擦り、沙都美は駆けて行く。
 
その姿を見送ってから起き上がろうとして──全身に激痛を感じ、恐る恐る身を起こした。
 
ハア、と息を吐いてから、辺りを見渡す。
 
白い壁、白い天井。ツンと鼻につく微かな薬品の匂い。窓の外からは溢れんばかりの太陽の日差し……。