FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1

「何っ……」 
 
一瞬の内に、気配が後方に移動する。

「成る程。風使いの増長天。風の中に“気”を隠してきたか」
 
ゾクッと悪寒が走る。不気味な声。

振り向いてヴァジュラの心臓部目掛けて刺突を繰り出し、見事命中させたが──ニヤリと笑っただけで、顔色一つ変えずに真吏の剣を引き抜いた。
 
真吏は2、3歩下がり、ヴァジュラを見る。
 
剣の刺さっていたところには、向こう側が見えるくらいしっかりと穴が開いていた。しかしまったく慌てる様子もなく、ヴァジュラは手を掲げた。
 
すると上空を覆っている邪空間が激しく渦巻き、その一部がヴァジュラの体を取り巻いた。
 
黒い霧のようになったそれは、見る間にヴァジュラの傷を癒していく。
 
更に笑うその顔が、憎らしくて堪らない。

 
根本的なものを絶たなくてはならないのだ。
 
邪空間は憎悪や恐怖の感情を吸い込んで大きくなる。それらを一気に押しつぶす力が必要なのだ。そう、創造神のような……。


「聖……」
 
真吏に変わってヴァジュラに突っ込んでいくジャクラ。その隙に真吏は剣を持ち直した。
 
すぐにジャクラの応援に向かう。
 
 
せめて聖が目覚めるまで。
 
それまでここでヴァジュラの足を食い止めなければならない。
 
そう思い、必死に戦った。
 
斬り付けても斬り付けても、すぐに回復してしまう化け物を相手に。何とか“運命”を切り開こうとして。