まさかティージェが創造神だということを、李苑が知っていようとは思わなかったが。
 
あの時先に亡くなったはずのラクシュミー。
 
どうやってそれを知ったのか……もう、今は知るすべがない。


「だが……」
 
ジャクラは自嘲気味な笑みを漏らす。

「ラクシュが死んでも、こいつは創造神の力に目覚めなかった。……何故だ! ラクシュは死を覚悟してまでお前達を救おうとしていたのに……!」
 
ダン、と地面を叩いて悔しがるジャクラ。

吉祥天ラクシュミーの死は、毘沙門天ティージェの創造神としての覚醒であり、ヴァジュラの最も恐れる力であった。
 
だからこそヴァジュラは李苑を殺せなかった。
 
最も恐れる力を出現させるわけにはいかなかったから。
 
しかし……。
 
李苑が息絶えても、聖は怒りを爆発させただけで、創造神としては覚醒しなかった。

恐らく、それはヴァジュラにとっても驚きの結果だったに違いない。

 
何故力は発動しなかったのだろう。

それは、誰にも解らない……。

 
 
ビクン、と十夜の体が震えた。

「……ヴァジュラが攻撃してきた」

「分かった」
 
スクッと真吏が立ち上がる。

「十夜、聖を頼む」