聖の横っ腹を触手が貫いた瞬間、真吏が飛び込んでヴァジュラの目の前にカマイタチをぶつけた。

ヴァジュラが僅かに怯んだ隙に、聖の体を抱えて距離を取る。
 
ジャクラも十夜を木々の呪縛から救い出し、真吏の方へと駆けつけた。
 
正気に戻った十夜が夢幻球を放ち、簡単な結界を張る。数秒でも保ってくれればいいと。


「聖!」
 
真吏、十夜が叫ぶ。
 
必死に体を揺さぶっていると、ひらり、ひらりと白い花びらが地面に落ちた。

「……これは」
 
触手に貫かれたと思った部分から、それは舞い落ちてきた。

「李苑が、護ってくれたのか……」
 
真吏は大きく息をつき、安堵する。聖には傷ひとつついていなかった。ただ衝撃が強すぎて意識を飛ばしてしまったようだ。

「李苑……私の、せいでっ……」
 
皆を護ると誓ったはずなのに、また自分のせいで迷惑をかけ、大切な命まで奪ってしまった十夜は、がっくりと項垂れた。

「自分を責めるな。それだけヴァジュラが周到だったということだ」
 
真吏は十夜を慰めながら、ふと、ジャクラの姿を目にした。
 
目を大きく見開き、ガクガクと震えている。

「そんな……馬鹿な……」
 
そう、呟いて。