十夜に庇われた李苑だけはほぼ無傷であったが、皆と同じように俯き、次々に大粒の涙を溢していた。

「ラクシュ……」
 
そんな李苑に、ジャクラがそっと語りかける。

「気をしっかり持て。ラクシュがしっかりしていないと結界が崩れる」

「は、はい……」
 
嗚咽しながら、李苑は頷く。

何とか心を落ち着けようと深呼吸を試みるが、うまく息を吸い込む事が出来ない。

「く、れは、さぁんっ……れ、ん、くんっ……」
 
落ちる涙は止まらない。
 
ジャクラは李苑から目を離し、他の仲間達を見た。
 
3人もの命を失った直後では、戦えないか……。そう、思った。

 
不安定に揺れる結界。
 
李苑の気持ちが安定しないからだ。今も結界を崩そうとするヴァジュラの攻撃は続いている。

「しっかりしろ! まだ戦いが終わったわけじゃない!」
 
叱咤するも、顔を上げた全員の顔には覇気が無かった。

「おい……!」
 
このままでは最悪の事態になる……ジャクラが焦りを感じ始めた時。
 
ぐにゃり、と結界が大きく歪み、弾け跳んだ。
 
触手が全員に襲い掛かる。ただ一人、李苑だけ除いて──。