ドクン、と心臓が跳ね上がった。
 
次に、体中がガクガクと震えだす。

「……そ、んな……」
 
紅葉と蓮の“気”が、ぷっつりと消えてしまったのを感じた。
 
体の血液が急速に冷えていく感覚。
 
ヴァジュラの触手が襲ってくるが、どうやって躱しているのか分からないくらい、頭が真っ白になった。

「うあっ」
 
すぐ近くで、真吏の呻き声。
 
振り返ると、太腿に触手が貫通していた。それをまるで夢の中にいるような感覚で見る。

「真、吏……」
 
体が、動かない。

「ボケッとすんな!」
 
ジャクラの怒鳴り声がした。
 
彼は真吏の足に刺さった触手を切り裂くと、腕を掴んで李苑の方に投げ飛ばした。その次には聖の首根っこを掴み、同じように投げ飛ばす。

「ラクシュ、結界だ!」
 
ジャクラの声に、李苑はハッとしたように両手を広げた。ふわり、と優しい空間が広がり、全員を包み込む。
 
その中で、ジャクラを除く全員が、ガックリと項垂れていた。
 
真吏は太腿をやられ、十夜も両腕から血を流していた。

そして聖も、自分で気付かぬうちに細かい傷をあちこちにつけていた。