普通ならば、1対1でやり合っているところに飛び込むことは危険だ。自分ばかりか、味方までも劣勢に陥れかねない。
 
だが、蒼馬は絶妙のタイミングで聖と阿修羅王の間に割って入った。聖と長い付き合いの彼だからこそ出来たのかもしれない。

 
蒼馬の乱入で、静謐な世界が一気に騒がしくなる。
 
今が攻め込むチャンスだ。

「行くぞ、蒼馬!」

「おうっ!」
 
2人は同時に阿修羅王に突っ込んでいった。

「いいよ、おいで……2人とも」
 
阿修羅王はゾクゾクするほどの快感に身を浸していた。

 
聖、蒼馬の、目覚めた完全なる力に、阿修羅王はどんどん押されていった。

それでも戦う事の喜びを感じずにはいられない。それこそが、“闘神”としての本能。そして、自らの願い。

 
蒼馬の攻撃でバランスを崩した阿修羅王は、その後に来た聖の攻撃を避け切れなかった。剣が左肩スレスレを突いてくる。
 
よろけてアスファルトの上に手を付くと、目の前に剣がピタリと張り付いた。
 
一呼吸おいて、阿修羅王は大きく息をついた。

「また、負けてしまったねえ」
 
そう言う彼女からは、闘争心は完全に失せていた。

「阿修羅王……」
 
ただ決闘をしに来たとはやはり思えず、聖は阿修羅王の動向を見守った。少し離れたところにいる蒼馬も、剣を手放し、黙ってそれを見守る。