『運命は変えられます』
 
李苑の言葉が閃く。

(そう、護りたい人のために)
 
だから。

(こんなところで)

「死ねるかあああっ!!」
 
頭から落下しながら、目の前にある灰色の壁に渾身の力を込めて剣を突き刺した。
 
ガガガガっと激しい音を立て、壁を削り取りながら落ちていく。途中何かに引っかかったらしく、ガクン、と落下は止まった。
 
その反動でクルリと一回転し、壁に突き刺さった剣の上に立った。
 
上を見上げると、阿修羅王が聖を追って飛び降りたところだった。聖が途中で止まったのを見て、剣を後ろに引いた。
 
聖は剣を踏み台にしてジャンプすると、阿修羅王に向かって手を翳した。壁に刺さっていた剣が手の中に戻ってくる。
 
落下してくる阿修羅王と交差する瞬間、両者の剣はぶつかり、火花を散らした。力の限りそれを振るったが、横に弾き飛ばされる。
 
完全に宙に放り出された。地面までの距離が短すぎて体勢を整える時間がない。


「セイ!」
 

道路に叩き付けられる瞬間、何者かに体を受け止められた。

「──蒼馬!?」
 
タイミング良く現れたのは蒼馬だった。2人は縺れるように道路に転がった。