「い、痛い……」
 
よろよろと起き上がる。
 
植え込みに植えられていた背の低い木々は見事に砕け散っていた。その枝がチクチク肌に刺さる。

「蓮の奴~! 乱暴なんだから!」
 
傷だらけになった手足に涙目になる。
 
だが次の瞬間にはもう空を仰いでいた。

「自分だけ夜叉王の真ん前に出たみたいね」

「何っ……では戻らなくては!」
 
蓮を護ると誓った十夜が慌てて走り出す。

「ええ。まったく、あたしを護ろうなんて100年早いっての!」
 
いつまでも“お姉さん”でありたい紅葉はそう悪態をつくと十夜の後を追った。

一人別方向に飛ばされた蒼馬は、何とか足から道路の上に着地し、顔を上げた。そこで蓮の言っていた意味が解る。
 
すぐ目の前を疾風の如く阿修羅王と聖が通り過ぎていった。2人は剣を交えながら上へ跳んでいく。

「おっし!」
 
蒼馬は気合を入れてそれを追った。




──白い空間でその蒼馬の姿を見ていた運命の女神フォーチュンは、指先でそっと歯車を撫でた。

彼女の瞳に映る未来に、蓋をしてしまいたいと感じながら。