同じく水の波紋に弾き飛ばされた蒼馬、紅葉、蓮、十夜は、間を置かず立ち上がった。だが、すぐに夜叉王の大剣から繰り出される素早い攻撃に、まともに立つ事すら許されなかった。

「輝耀拳<きようけん>!」
 
紅葉の放った光状の結界は、仲間達の身を護るのと同時に目晦ましの効果もある。

だが、僅かな気配だけで敵の場所が解ってしまう夜叉王には意味のないことだった。
 
空気中の水の分子が震える。
 
細かな振動は段々と大きくなっていき、地面を揺らす。

「何っ……」
 
何か大きなものに取り囲まれている……そう感じた時には、すでに周りを水で囲まれていた。結界にかかる水圧はゆっくりと強くなっていく。

紅葉の額から汗が流れ落ちる。それを見て蓮が立ち上がった。

「俺に任せて」
 
スッと大剣を構える。

「蒼馬、聖を頼むね」
 
前を見据えたままそう言う。

「えっ!?」
 
蒼馬がその意味を問う前に蓮の技が放たれた。

結界が弾け跳び、水が一気に4人を押しつぶそうとした。
 
だが、その中から別の水が飛び出した。
 
グワアアと咆哮しているようにも聞こえる水竜は、蓮以外の体を100メートル余りも飛ばした。

「ちょ、ちょっとっ……」
 
慌てて紅葉は自分に結界を張り、勢い良く植え込みの中に落ちた。すぐ傍に同じような格好で十夜も落ちてくる。