瞬時に別空間が広がった。

「──!?」
 
全員が動きを止める。
 
辺りを取り巻く空気がガラリと変わる。
 
息をするのも躊躇われるような邪悪なものから、透明で清浄なる空気に。


「これは……⁉」
 
真上に広がる邪空間の邪気を完全に遮断してしまっている。陰陽家の術者でも、ここまで完璧に遮断することは不可能だ。

「紅葉ではないな?」
 
真吏の言葉に、紅葉は頷く。

「誰なの……!?」
 
辺りを見回す。
 
冷え切った体にふんわりと熱が帯びていく。明らかに“聖なる者”の結界。

(これは……)
 
聖は結界内に漂う“気”を辿る。
 
間違いない。知っている者の力だ。
 
李苑を振り返ると、彼女はとても困惑していた。信じられないような顔で前方を見据えている。

「李苑、この結界の主は……」
 
李苑は聖をチラリと見た後、前方を指差した。
 
全員、そちらに目をやる。

 
そこに──いた。

 
この結界の主であろう背の高い女が、こちらに向かって歩いてきた。その後ろから、もう2人。

「えっ……」