「やっぱり謝ったわよ」

「そうですね」

「だから言ったでしょう?」
 
軽くウインクしてみせる紅葉に、十夜も複雑そうに笑う。女の子達だけが解る話に、男子は完全に蚊帳の外だ。


それから、ランプの薄暗い灯りの中、4人用のダイニングテーブルを囲みながら軽い朝食をとる。

「真秀さん、みんなの様子は?」
 
朝食を用意してくれた真秀に話しかける紅葉。

「そうね……あまりいい状態ではないわ。そろそろ弟も限界でしょう」

「分かりました。では、私達が出たら、全員一時撤退させてください。結界は私が支えますから、その間に少しでも休養を」

「分かったわ」
 
真秀は頷くと外に出て行く。恐らく、総領の言葉を術者たちに伝えに行ったのだろう。
 
その姿を見送り、目線を前に戻した聖は、向かいに座っていた李苑と目が合った。
 
にっこり、と微笑まれる。
 
それに応えるように軽く笑い返す。夕べの出来事を思い出してかなり動揺はしているけれど、それを表に出すと格好悪い。ここはポーカーフェイスを気取っておく。


 
20分ほどで朝食を済ませた7人は、すぐに家の外に出た。
 
術者たちがごった返す神社の境内を抜けると、まったく人気のない道路を、常人の何倍ものスピードで駆け抜けていく。

ほぼ無言で走っていくと、邪空間の中心がある都庁が見えてきたところで紅葉が止まった。

「あたし、しばらくここで結界張ってるわね。術者の皆と交代するから」

「分かった」
 
そう、返事をした時だった。