聖、真吏はすぐに目を覚ました。
 
李苑は眠ったままだが、それは幻惑や怪我のせいではなく、身体の疲労のためのようだ。
 
しかし。
 
蓮の傷は幻惑が解けても消える事はなかった。今も左下腹部からはドクドクと血が流れ続けている。

「蓮……!」
 
それを見た聖は体を硬直させた。──先程の幻惑が、瞬時に蘇る。

「紅葉、一旦ここから離れよう。蓮を安全な場所へ」
 
真吏が素早く蓮を抱き上げる。

「……え、ええ、そうね」
 
紅葉は大きく息を吐き出した後、立ち上がった。

「圭一郎さんのところまで案内するわ。ついてきて」
 
言うなり、高くジャンプして遥か向こうのビルを飛び越えた。

「聖、蒼馬、そちらは頼む」
 
真吏はそう言って、紅葉の後を追う。

「おおよ! セイ、李苑ちゃん頼むな!」
 
蒼馬はそう言い、力なく突っ立っている十夜の腕を掴んだ。

「一緒に来いよ」

「あ、ああ……」
 
十夜はそう言うが、一歩足を踏み出しただけでガクッと膝を折った。どうやら力を使いすぎたため、体が動かないようだ。

「んもー、しっかりしろよ!」
 
蓮のことで苛立っているためか、十夜に優しく出来ない蒼馬。強めに腕を掴むと、真吏の後を追ってジャンプした。