蒼馬は、静かに目を開けた。
 
しばらく身を横たえたままでボーッとしていたが、やがて弾けるように飛び起きた。

「皆!!」
 
叫びながら辺りを見渡す。
 
全員がアスファルトの上に倒れていた。だが、一人だけ起きている者がいる。倒れている真吏の前に座り込み、首を項垂れている少女。

「……ファリア!」
 
蒼馬はすぐに真吏を助けようと踏み出したが、後方で誰かが目覚めた気配を感じ、振り返った。

「──紅葉!」

「……蒼馬?」
 
紅葉も幻惑から解き放たれたばかりでぼんやりとしていた。顔にかかる髪の毛を後ろに流し、そこで動きを止める。
 
そして蒼馬と同じように、ハッとして顔を上げた。

「皆はっ!?」
 
倒れている者達を見渡す。と、紅葉の目に血だらけで倒れている蓮が映った。

「蓮!!」
 
悲鳴に近い声を上げ、紅葉は蓮を抱き起こす。

「蓮っ!!」
 
もう一度呼ぶが、まったく動く気配がなかった。紅葉の身体から血の気が失せていく。

「蓮!」
 
その様子に気付いた蒼馬がやってくる。
 
そして蓮の状態を悟ると顔を青ざめさせた。そして、大事な友人をこんな状態にした者に対して、沸々とと怒りが湧き上がってきた。