FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1

何十畳もある広い和室。
 
そこに一人、ぽつんと正座をしている。
 
他には誰もいない。あるのはただ、静寂のみ。
 
真吏は静かに目を閉じた。
 
 
幼い頃過ごした別邸。
 
忙しい両親からは毎日のように玩具などの贈り物が届けられた。
 
けれど、本当に欲しいものはそんな玩具ではない。執事に笑顔で渡される、綺麗に包装された大きな箱。それを自ら開けたことはなかった。

 
本当に欲しかったものは。
 
心。
 
愛情。
 
ただそこにいて、笑いかけて欲しかった。
 
他愛もない話を、頷きながら聞いて欲しかった。

(孤独だった)
 
真吏は、大きく息をつく。

「だが」
 
カッと目を見開き、立ち上がる。

「それがあの人達なりの愛情だったのだと、今は解る」
 
鋭い目線を、奥の間へ向けた。



 
空間が揺らぎ、部屋が消える。
 
残ったのは、朱に染まった空間と、ファリア。

「どうした。“気”が乱れているようだが。……せっかくの幻術が効力を失くしている」