FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1

「──ぅあっ……」
 
蓮の、詰まった呻き声。
 
ファリアは大きく息をしながら、自分に倒れ掛かる蓮を受け止めた。その体を貫く細い剣。幻惑の世界では、やはりファリアの方に分があったのだ。
 
互いの剣は同時に消える。
 
痛みのあまり意識を失った蓮の体を、ファリアはしっかりと支えてやる。
 
蓮の体から流れ出る温かな血が、ファリアの体をも温めていく。

「……」
 
その温もりを手放したくなくて、しばらくそのまま抱きしめていた。
 
良く解らない感情が、身体中を取り巻く。

 
それがどのくらいの時間だったのか。
 
急に我に返ったファリアは蓮を突き飛ばした。蓮の体はアスファルトの上に落ちる。

「私、は……」
 
深紅に染まった手のひら、腕、体。
 
“何か”が迫ってくる。
 
恐ろしい『過去』が、追いかけて来る──!

「ああっ……! 助けて……助けて、ヴァジュラ様っ……!」
 
頭を抱え、地面に膝をつく。
 
助けて。
 
誰か、誰か、誰か……!!


目を泳がせた先に、真吏の姿が映った。


「こいつらを、倒せば……楽に、なれる……」


そう思い込まされているのだろうか。
 
ファリアはふら付きながらも真吏のもとへ行き、深く眠る彼の胸倉を掴み、引き寄せた。