「はあっ!」
 
突っ込んでくるファリアの剣をそれで防ぐ。
 
本来ならば錫杖は身を護るためのもの。攻撃するための武具ではない。が、この場合仕方ない。
 
剣と錫杖との短い押し合いの後、フーッと息を吐き出して、キッとファリアを睨み付けた。

「幻惑を解いてください」

「出来ぬ」

「……駄目、ですか」
 
ファリアからの返事はなく、代わりにグイグイ押された。
 
力では敵わない。
 
“気”を錫杖に流し込み、それを爆発させる。ファリアの手は雷に打たれたような衝撃を受け、苦痛に顔を歪ませながら後退した。
 
李苑は後ろを振り返り、聖や仲間達の位置を確認すると、誰も居ない空間へと移動した。それを追いかけるファリア。
 

すぐに回り込まれ、剣を振られる。
 
錫杖でそれを受け止めようとするも、足が縺れて体勢が崩れた。ふらりとよろけてアスファルトの上に倒れる。

敵の結界内、しかも幻術の中。もう体が限界だったのだ。

目前に光るファリアの剣。

「ここまでだ」

「──」
 
李苑はギュッと錫杖を握り締めた。
 
そして、それを掲げた。

「精華光っ!!」
 
目も眩むような白い光が弾け飛ぶ。