FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1

「しかし吉祥天、お前が私のスピードについてこれると思うな!」
 
言うなり、ファリアは突っ込んできた。
 
気が付くとすでに目の前。
 
振り落とされる剣。
 
大気中から武器を引き出そうとするが──間に合わない!


「李苑!」

 
聖の叫びと同時に、キィン、と金属音が鳴った。
 
李苑の前に、誰かが立っている。

「おっと~、間に合ったようだな!」
 
李苑を振り返ってニヤリと笑ったのは、蒼馬だった。

「でやっ」
 
と、ファリアを押し返し、また振り返る。

「正義の味方、蒼馬くん、カッコ良く参上! な~んちゃって」

「……馬鹿蒼馬」
 
呆れながらも、親友の登場にホッとする聖。

「ありがとうございます、蒼馬くん」
 
李苑もホッとしたようだ。

「どういたしまして! っていうか、セイ達がファリアを引きずり出してくれたおかげで、ここに来れたんだけどね~」
 
などと説明をしている間に、いつの間にか蓮がファリアの相手をしていた。

「ヤベッ、蓮の援護してくるから!」
 
と、蒼馬は走り出す。
  
その後すぐ、聖の隣に紅葉がやってきた。真吏は蓮達の援護に向かったようだ。

「聖、大丈夫?」
 
紅葉が聖の背中を支えながら訊く。

「うん、大丈夫だ。少し休めば……」

「そう。ごめんなさい、あたしがちゃんと気付いていれば、ファリアの幻惑に惑わされる事もなかったのに……」
 
年長者として、『術者』として、皆を引っ張っていく立場にある紅葉は、皆を危険に晒した事を気にしているようだ。

「俺も、気付かなかったから……」

「私も気付きませんでした。紅葉さんのせいではありません」
 
李苑もそう言う。
 
紅葉は少しだけ笑って、立ち上がった。

「さあ、あの子を……どうにかしないとね」
 
少し離れたところで剣を交えるファリアと蓮達に目をやる。