FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1

自分達と同じ類の力を持つ者。
 
“悪しき者”ではない者。
 
だから結界に排除されなかったのだ。

 
聖と李苑は顔を見合わせると、軽く頷いた。

「皆さんを探します」
 
李苑は目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませる。そうして皆の気配を探る。
 
そこに、別の気配。

グラリ、とビルが揺れる。いや、斜めに傾いた。

「きゃっ!?」
 
足場のバランスが崩れ、倒れ掛かるところを聖が引っ張り上げる。

「跳ぶぞ!」
 
崩れるビルから、隣のビルへ。
 
しかしそこも着地したと同時に崩れる。
 
已む無く下の道路に降りると、周りを妖魔に囲まれた。

(これも幻だとは思うが……)
 
突き出された槍の切っ先が、頬を掠めた。
 
僅かな痛み。
 
頬に触れた手には、少量の血が。

「これも幻……なのか」
 
幻惑とはいえ、痛みもあるとなると戦うか逃げるしかない。

 
右手を空中に翳して剣を引き抜くと、そこに“気”を送り込み、そのまま大きく一振りした。
 
地を走る“気”が、妖魔の姿をかき消していく。
 
だが、すぐに空間が歪んで、新たな妖魔が現れる。
 
相手にしているとこちらの体力が保たない。逃げるか、それとも……。


「……李苑。ファリアの位置は探せるか?」