「……紅葉さんも蓮くんも、しっかりしてますね」
 
感心したように李苑が言った。
 
それに蓮は照れながら答える。

「え、いや……。多分、皆よりこういう状況に慣れてるだけなんだよ。俺たち、『術者』だからさ」

「ああ、そういえばそうだな……」
 
真吏は納得する。
 
紅葉と連の力は、聖も修行中に聞いていた。


『陰陽家』

万物の生成と変化は陰と陽、そして木、火、土、金、水、という五つの元素から成っていることを説く、思想集団のことである。
 
その中で、実際にその力を操る事の出来る者達のことを『術者』と呼び、紅葉はその陰陽家『術者』の総領なのだという。

古来より人々の中に紛れ込む“鬼”を退治することを生業とし、今もそれを受け継いでいる。

それでも、人ではないものと対峙する事に慣れるものなのだろうか。

やはりそれはその人の度量なのではないだろうか、と聖は思う。

 
 

電話を終えた紅葉が、皆を振り返った。

「すぐに迎えが来るわ。それで一旦東京の圭一郎さんのところに行きましょう。……かなり、切迫した状況みたいよ」

「……どうなってるんだ?」
 
聖が訊くと、紅葉は渋い顔で折りたたみ式の携帯電話を畳んだ。