FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1

「あ~、今日も疲れた~」
 
疲れきった表情でリビングのソファに転がる蒼馬。その横で聖が数学の参考書を開いていた。

「……良く勉強する気になれんな」
 
感心して言う。

「ああ、成績落とせないから……。蒼馬もヤバいんじゃないのか? 家には『受験勉強の合宿』って言ってあるんだろ?」
 
推薦を狙っている聖は、同じく推薦狙いの蒼馬に言った。

「おおよ。『柊塾』の名前出したら即OK。ウチの親って単純~」

と、笑った後、ハア、と盛大に溜息をつく。

「でも俺、今のでいっぱいいっぱい。マジ挫けそう……」
 
朝から晩まで特訓の日々が続いているのだ。普通だったら勉強まで手が回らないところだ。


「聖は偉いわねえ」
 
紅葉が感心する。

「ああ、感心するな」
 
真吏にもそう言われる。そう言う彼も、ノートパソコンを開いて株の勉強をしているようだ。

「そ、そうかな」
 
誉められて少し照れる。

いつも真顔なのに、たまに崩れる表情がかわいい。紅葉はうふふ、と笑って聖の頭をグリグリ撫でた。

「素直な弟ってかわいいわねえ~」

「かわ……!?」
 
そう言われると馬鹿にされたようで気分が悪い。聖は無言で立ち上がると、リビングからダイニングへと移動した。