聖は蒼馬の腹の手前で剣をピタリと止めた。すると、ボンっと蒼馬の姿は白煙に包まれ、消えてしまった。同様に、蒼馬が相手をしていた聖の姿も白煙となって消える。
 
互いの『本体』は、数十メートル離れたところで、先程と同じ格好のまま止まっていた。

「あ~っ、ちくしょう~!! またやられたー!!」
 
蒼馬は剣を放り出し、地面に突っ伏す。剣は地面に落ちる前に、ふわりと空気に同化した。

聖は頬を流れる汗を拭い、一息つく。

「お疲れ様! 2人ともなかなかいいわよ。ホント、上達早いわね」
 
パンパンと手を鳴らし、紅葉が言う。

「でもセイには勝てねえ~! 今日はイケると思ったのに~!」

「それは蒼馬の詰めが甘いからだ」
 
悔しがる蒼馬に、近くで見ていた真吏がビシッと言う。

「お前は勘だけで動くからいけないのだ。聖に勝ちたかったらもっと戦略を練るのだな」

「うう~、真吏兄さんてば厳しい~」
 
蒼馬は更に突っ伏して泣き真似をする。

「はいはい、邪魔だからどいて。蒼馬は聖と反省会ね。次、真吏と蓮~」
 
紅葉は真吏と蓮の背中に、人型をした白い紙を貼る。そして手印を結ぶと、ボン、と音を立てて真吏、蓮の『影』が生まれた。
 
実戦をするにはまだ危険だと、紅葉の力で『影』を作り、それと戦闘演習をしていた。
 
蓮も同じような力があるらしく、紅葉が演習をする時は、蓮が『影』を作っていた。