「……どうしてくれるのよ、この惨状を……」
 
額に手を当て、紅葉は嘆いた。

「ごめん、紅葉……」

「すまぬ……」
 
蓮、真吏が謝る。

「いいわよ、仕方ないもの。はあぁ……。その代わり、ここ、片付けてね……」
 
力なくそう言い、ズルズルと座り込む紅葉。

「どうした!?」
 
真吏が駆け寄る。

「ちょっと、力使いすぎただけ。水と風を抑えるなんて、初めてよお……」
 
そういえば、紅葉は何かの力を持つ術者だと言っていた。その総領だとも。詳しくは分からないが、今はその力に救われたようだ。
 
しばらく座り込んでいた紅葉は、ふと、顔を上げた。

「そうよね。このままじゃマズイわよね」

「……何が?」
 
蓮が訊くと、紅葉はニヤリと笑った。

「決めたわ。これから皆で山篭りしましょ」

「はあ~?」
 
いきなり何を言う、と皆声を上げる。

「飛高の修行場あるし、近くに別荘あるし、そこに行って力をコントロール出来るようにしましょ。嫌だなんて言わせないわよ。そのままでいたら人様に迷惑がかかるわ。そうでしょ?」
 
にっこりと微笑むその顔が、何故か怖い。有無を言わせぬような迫力がある。
 
確かに、この現状を見れば人に迷惑をかけるというのは一目瞭然だ。

「それに……またあの子が来ないとも限らないしね」